地獄の黙示録 特別完全版
地獄の黙示録 特別完全版
酒におぼれ目的を失ったマーティン・シーン.そんな彼に密令が下る.それはジャングルの奥地に消え,原住民を率いて帝国を築いたカーツ大佐(マーロン・ブランド)を暗殺せよと言うものだった.生きる希望を失っていた彼には生きて帰れる保証のないこの命令は打ってつけだった.最初に出会うのはキルゴア大佐(ロバート・デュバル).「ワルキューレの騎行」を大音量でスピーカに流しながら爆撃を加えるシーンは余りにも有名だ.アオザイをまとった小学校の先生の元,避難をする小学生.そこにも容赦なく爆撃が….誰もがベトコンに見えたアメリカの狂気だ.負傷した住民を救助しようとしたヘリコプター.しかしその中に爆弾を投げ込む少女.ヘリコプターは爆発炎上.アメリカ兵は360度水平射撃.住民がバタバタと死んでいく.ここまでは20年前に見たときも覚えていたが,この真の目的を覚えていなかった.キルゴアはサーフィンしにここに来たのだ.自分の部下にサーフィンのチャンピオンがいることを知り,敵の爆弾が降るなか,部下にサーフィンをすることを勧める.いやこれは命令だ.敵の砲弾がやまないことに激怒したキルゴアは,ナパームでの爆撃を要請.森は全焼する.もちろん中にいる人も….にんまりするキルゴア.しかしこの大規模な爆風で風向きが逆転し波が収まってしまった.「この波ではサーフィンできません!!」と早々にやめる部下たち.このこと自体がアメリカの狂気だ.ここでメコン川の上流まで連れて行ってくれる哨戒艇に出会う.中流付近で巨大なネオンサインに出会う.米軍の基地だ.ちょうどプレイメイトの慰安に遭遇.このシーンも有名.しかし興奮した群衆がステージに駆け上がり混乱状態に.中断してヘリに乗り込むプレイメイトたち.次の場所では,人の気配がない.この基地は襲撃されて跡形もない.そこにプレイメイトのヘリもあった.彼女たちは生きていた.小数の兵士も残っていた.ガソリンを分けてくれればプレイメイトを抱かしてやると持ちかける.彼女たちは兵士に胸を開く….このシーンも覚えがない.途中,野菜を積んだ船を検閲.ある樽を調べようとしたときに女性が急に動いた.発砲.瀕死の重傷となる.病院へ運ぼうという.自分たちで撃っていながらである.これが規則という.しかし,シーンは一発で楽にしてやる.「君たちが悪いのだ」ここにも狂気が隠れている.もちろんシーンではなくアメリカの狂気だ.彼女がかばった樽の中身はなんと子犬.かなり上流で出会ったのはフランス人.このベトナム戦争のきっかけはフランスだ.フランスはベトナムを植民地にしていた.20世紀になってからイギリスとアメリカにアジアの植民地を取られ,残すは東南アジアだった.このフランス農園の家族は不思議な存在だ.そこでの魅力的な未亡人との邂逅.シルエットが美しい.船はすでに国境を越えてカンボジアに.いよいよカーツとの対面だ.すぐに捕まり,部下も首を切られる.しかしカーツは彼を自由に.独特の死生観を解く.そして彼は命令を遂行する…これは反戦映画ではない.もちろん戦争励賛の映画でもない.観念的な内面思考の映画だ.今回のあらたなカット割りでかなりわかりやすい映画になったと思う. ☆☆☆☆☆